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ラストで刑務所の面会室に現れたヘンリー(アダム・ドライヴァー)の、短く切った髪と生やした口髭が容易くレオス・カラックスを想起させるまま、完膚なきまでにアネットから愛を拒絶されたヘンリーを自身に投影してみせるやり口は、かつてドニ・ラヴァンを依り代に元カノと今カノとをフレームの中で交錯させたカラックスの私小説的な渾然一体からすればいささか整理が効いて物分かりが良すぎる気もしたにしろ、愛がなければ生きていけないけれど、ひとたび手に入れたその愛は我が麗しき欠落(劇中では「深淵」と言い換えられている)をスポイルしてしまうに違いないというパラノイアを喰って生きる「私」という人間の告解を思わせる体をとりつつ、その実そんな「私」への全面的な憐憫に満ち満ちた今作は、前作『ホーリー・モーターズ』にあった底知れぬ苛立ちからすればカラックスとしての健康をうかがえたのは確かなのだ。ヘンリーを“フェミサイド”と糾弾しハラスメントを匂わす幻想シーンをインサートして彼を共感の不能へと突き落としておきながら、アン(マリオン・コティヤール)もまた伴奏者(サイモン・ヘルバーク)との関係を明かさぬまま妊娠をヘンリーとの関係に利用したのだと、あなたたち二人は自分たちそれぞれの都合のために私をいいように使ったではないかとその欺瞞をアネットに責め立てさせるに至って、世界を肯定するか否定するのかそのどちらかを選ぶことへの強迫観念に囚われた人々に向けたカラックスの仕草に、この作品はそのフィルモグラフィーで初めて観客の存在を意識して撮り上げたのだろうことを思ったし、とはいえモノローグでもダイアローグでもなくリフレインによって主題を定着させるための機能としてミュージカルというフォーマットを選んだあたり、これまで観客との信頼関係の一切を必要としなかったカラックスがいまだ観客を信用していないがゆえの、過剰ともいえる苦肉の策に思えたりもしたのだ。ヘンリーとアンが真夜中のタンデムで走り抜けていく時の圧倒的な移動の快感を最後にカラックスは幻視のエゴを鞘に収めて、それから後はひたすら言葉(=歌詞)を尽くしてワタシたちに、愛とはけっして後悔しないこととかいう戯言は忘れろと説いている。
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