2021年12月30日

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男/奴らを黒く焦がせ!

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オフィシャルサイト

ハッタリやケレンの口八丁手八丁とは無縁の、物腰もおだやかに正攻法の足取りで突破する論理の人に思えたロバート・ビロット(マーク・ラファロ)は劇中で二度だけ感情を爆発させる。一度は自分の子供の前でデュポンの嘘にまみれたやり口をfucking evilと吐き棄て、もう一度は官民挙げての裏切りにThe system is rigged!(システムは糞だ)と妻サラ・ビロット(アン・ハサウェイ)に抑えることのできない叫びをぶつけてしまう。有名な法律事務所のパートナーに名を連ねるまでにキャリアを高めたビロットがけっしてエスタブリッシュメントの出自でないことを彼の闘いの背景にしてしまうのは安易に思えるけれど、同僚ですらが彼の学歴をジョークにし、敵対するデュポンの弁護士フィル・ドネリー(ヴィクター・ガーバー)には田舎者が!と罵倒されるその背中に彼もまた彼なりのアメリカの分断を生き抜いてきたことを見るのは避けられず、してみれば、世界のともした灯りに照らされることなく漂い離れてしまう人たちを描いてきたトッド・ヘインズが、そんなビロットを旗頭に灯りを正しくともすべく世界を告発する、彼にしては直截に思える物語を選んだことにも当たり前のようにうなずけるのだ。かといってビロットの一面的な英雄譚を描くのではなく、かつては「女性弁護士」だった妻サラが専業主婦として夫と家庭を支えることの屈託を添え、事務所をあげてデュポンと事を構えることに対してまだキャリアの浅い黒人の弁護士が、おれはあんたらの正義のヒーローごっこのためにここまで這い上がってきたわけじゃない、といった風に疑義を差し挟むあたり、トッド・ヘインズは闘争のカタルシスもまた目眩しとなることを最後まで自分に言い聞かせながらビロットの戦いと併走してみせている。こうしてシステムの巨悪に立ち向かう人々を実話ベースで描く物語が映画史で途切れた試しはなく、マーク・ラファロにしたところで『スポットライト 世紀のスクープ』の記憶はいまだ新しいし、ある意味でストーリーは類型化してしまうジャンルでありながらなぜ幾多の監督たちがチャレンジし続けるのか、やつら(システム)がそれを止めないのであればこちらもそれを止めないだけのことだという、シンプルにして絶対的な答えをこの映画のラストでビロットが告げていたように思ったわけで、そんな腹のくくり方で自浄するシステムもまた存在するアメリカとアメリカ映画にないものねだりを煽られて悶々とするところまでがワタシの馴染みのエンディング。
posted by orr_dg at 04:02 | Comment(0) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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