2021年10月03日

レミニセンス/死ぬまでROMってろ

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フィルム・ノワールやファム・ファタールの意匠を思う存分借り出してはいるものの、実際のところはニック・バニスター(ヒュー・ジャックマン)という屈託をためた一人の男の自爆するセンチメントが右往左往するに過ぎず、メイ(レベッカ・ファーガソン)にしたところが劇中で文字通り演じさせられるファム・ファタールの衣装をいったん脱ぎ棄てた時、では彼女は世界のどこからやってきていったい何を許して何を憎み、どのような血の轍にはまって抜け出せなかった人なのかが深彫りされることのないまま、ただただニックの追い求める妄想と理想の女性へと矯正されていくばかりだったのだ。しかし、その全てがラストで昏睡したままタンクに浮かぶニックが投影し続ける最良の記憶なのだとしたら、そもそもノワールの行きつくゼロ地点への胴体着陸を期待するのは無理筋というものだし、それよりはむしろ『ジェイコブズ・ラダー』のフォルダに放り込んでしまった方が収まりがいいように思うのだ。リサ・ジョイがショウランナーとして采配した『ウエストワールド』で記憶と実存をめぐる物語を吐き気がするような執着で描いた反動なのか、ここでの記憶はすべて劣化した記録映像として腰が軽く慰みものになるばかりで、もしかしたら水没都市のメランコリーも、乾ききった西部の大地で延々と彷徨し続けたことの反動だったのかもしれず、タンディ・ニュートンはともかくとしてアンジェラ・サラフィアンにまたしても薄幸をまとわせたあたり、年齢が邪魔さえしなければエド・ハリスをニックにすえたパラレル・ワールドの幻視を試みたようにも思ったのだ。それにしても、ここまで舞台を仕立てながら干潮と満潮によって晒される世界と覆われる世界を陰陽の理へとおとしこむ執着がリサ・ジョイにもジョナサン・ノーランにも見当たらなかったのが惜しまれる。
posted by orr_dg at 21:00 | Comment(0) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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