2021年08月05日

返校 言葉が消えた日/バック・トゥ・ザ・トーチャー

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過去を語ることを怖れるあまりそれを亡きものとしようとする時、葬られんとする過去がそうはさせじと現在を道連れにする。そんな時代と精神の暗闘が生み出す恐怖の在りかをえぐり出す必然をホラーというジャンルに託した野心と、なによりその当事者性こその哀切と痛切と使命感に傍観者の胸の奥が揺さぶられる。地政学上の継子として翻弄されてきた台湾を想う時、この白色テロの時代が日本の統治から連なるうねりの先にあることは言うまでもなく、その悲劇とワタシたちとの距離をいったいどう掴めばいいのか、その時代に生きた人たちが未来や希望を求めては打ちひしがれていく作品を見るたび、傍観者としてのワタシはことさら心が乱れてしまう。自由の闘士として曇りなく描かれる読書会のメンバーに心ならずも引鉄を引いてしまうファン・レイシン(ワン・ジン)だけが彼女を覆う鬱屈の背景をその家庭に描かれていて、社会に石を投げる前に自分と闘わなければならない18歳ですらが否応なしに巻き込まれていく政治の季節がいかに容赦がなかったか、殉教の蒼い恍惚すら知らないまま贖罪を果たさねばならなかったファンの屠られた青春がそこかしこに打ち棄てられていた時代を新たに語り継ぎその鎮魂としたことで、永遠に一人で目をさまし続ける放課後の教室からファンを解き放ったラストに、ひと時とはいえワタシまでもが救われる。原作のゲームをプレイしてないのでその構造はわからないけれど、ここではファンが囚われた煉獄を学校に置き換えて視覚化し、その中を彷徨する彼女に立ち昇るフラッシュバックをゲーム内の実写ムーヴィーとしてちりばめながら、それをファンが串刺して時間軸の再構成をすることでサスペンスを抜き差しならない角度へと尖らせていく寄る辺のなさにおいて、ゲーム原作の実写化としては『サイレントヒル』の達成を思い浮かべたりもした。『怪怪怪怪物!』がそうであったように、恐怖=テラーは社会の忌まわしい反映であるという大前提を死守しつつ、そこに巣食う深淵の怪物を繊細かつ匂い立つ露悪で娯楽に幻視する確信と志の高さにおいて台湾ホラーが開拓しつつある未知がワタシは眩しくて仕方がない。
posted by orr_dg at 02:27 | Comment(0) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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