2021年04月19日

21ブリッジ/街で聖者になるのはたいへんだ

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オフィシャルサイト

アンドレ・デイヴィス刑事(チャドウィック・ボーズマン)によるマンハッタンのロックダウン、マンハッタン島に通じるすべての橋と鉄道を完全に封鎖すべしという桁外れな要請が拍子抜けするほどたやすく認められた理由が、ラストシークエンスでのマット・マッケナ警部(J・K・シモンズ)の長広舌からやがて浮かび上がってくる。命がけの仕事に精神をすり減らし狂ったバランスが自身および家庭生活をその犠牲に飲み込んでいく警官たちの不幸を解決するために、お前にとっては汚職でありお前以外にとっては互助となるシステムを私たちは現実的なビジネスとして機能させたのだというマッチポンプのプレイヤーにとって、閉鎖され密室と化したマンハッタンを丸ごとブラックボックスとする以外、致命的な自家中毒の夜を乗り切る術がなかったに違いなく、ひとつだけ彼らに誤算があったとするならば、アンドレがあらかじめ幸福を失った男でありかつその奪回への幻想を持ち合わせない男であったことだろう。製作陣の中にルッソ兄弟の名前を見るとき、ある一つの図式に思いが至るのを避けられないわけで、善悪を無効化することで還流するグローバリズムによって肥え太るアメリカに抱く拒絶と憂鬱こそがアベンジャーズを駆動させたことを思う時、ここで描かれたNY市警の醜悪なマッチポンプもまたそのミクロなアメリカとしてあったとも言えて、善悪の彼岸を超えた場所から彼らに鉄槌を下すアンドレの姿には自己犠牲を突き抜けたアベンジャーズの虚無が重なった気がしたし、アフガニスタンからの退役軍人であるレイ・ジャクソン(テイラー・キッチュ)とマイケル・トルヒーヨ(ステファン・ジェームス)をウィンター・ソルジャーになぞらえてみた時、警官殺しのはずの彼らに寄せるアンドレの憎しみ以外の感情にもそれが見て取れた気がしたのだ。アンドレとレイの攻防に巻き込まれて撃たれ横たわるホテルの従業員を一顧だにしない冷やかさが、ここには善と悪も正義と悪徳も存在しない、敵の視えない世界であることを告げていて、単なるエネルギーの交換として描かれる徹底してソリッドな銃撃戦がそれを饒舌に代弁している。『セルピコ』のナイーヴも『プリンス・オブ・シティ』の苦悩ももはや存しない昏睡した殲滅戦の終りなき水平を、すべてに通じる男アディ(アレクサンダー・シディグ)はたった一言 "coolhand" と名づけていた。
posted by orr_dg at 16:06 | Comment(0) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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