2020年07月01日

ワイルド・ローズ/夢でもくらえ

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オフィシャルサイト

歌が上手いやつなんてこの世にいくらでもいる、では聞くがおまえのその上手な歌はいったい何を伝えようとそこまで空気を震わせるのか、という真実の問いかけにローズ=リン・ハーラン(ジェシー・バックリー)が巡り合うための物語であって、本当の才能とは出口を見つけるためではなく正しい入口を知るために備わっているにちがいなく、才能と表現の出会いを分けるその一線を、彼女はナッシュビルで潜りこんだライマン公会堂のステージで知ることとなるわけで、この映画を凡百のサクセスストーリーと分けているのは答えではなく問いを探すその七転八倒に彼女のリアルを見つけたからなのだろう。元をたどれば海のこちらから持ち出されたものだとはいえ、グラスゴーでカントリーという脈絡のなさ(そしてそれが説明されることも特にない)も、ロックあるいはパンクというジャンルで観客の訳知り顔がノイズになることを阻止すると同時に、ワタシたちもスザンナ(ソフィー・オコネドー)と同じ初見の視線でローズと彼女の音楽への距離を詰めることに奏功したように今となっては思うのだ。とはいえ、エルヴィス・コステロがカントリーソングのカヴァー・アルバムを”Almost Blue”と名付けたことや、劇中でローズが「カントリー&ウェスタンじゃない、カントリーなんだよ、そしてカントリーはスリーコードが奏でる真実なんだ(Three chords and the truth)」と叫んだことを思えば、日々のメランコリーをレベルソングに書き直す挑戦がカントリーであることを知るべきなのだろうと考えたりもしたのだ。それもこれも、アテレコなしで豪快かつ繊細に歌い上げるジェシー・バックリーの頭抜けたパフォーマンスこそがこの映画を可能にしていたのは言うまでもないし、何より彼女と彼女のバンドが鳴らす大音量のサウンドに琴線を揺さぶられることで、精神の自粛を強制され萎縮して過ごすこの数ヵ月で自分がどれだけ不健康に強ばってしまっていたのかをあらためて知らされた気がしたし、自分の居場所を再確認して新たな中指を立てるためにも今一番「必要な」映画なのかもしれないと思ったりもした。ツアー出られるよね彼女と彼女のバンド。
posted by orr_dg at 01:49 | Comment(0) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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