2019年11月11日

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。〜長くていいのは親の寿命

it2_01.jpg
オフィシャルサイト

ベヴァリーを捉えた恐怖の源泉となっている自らの女性性に対する怒りや困惑をいささか体よく使っていたり(原作でもフクナガ版の脚本でも薬局のくだりや日光浴のシーンにセクシャルなあてこすりはない)、彼女をルーザーズのミューズではなくお姫様と騎士という定型におとしこんだジュヴナイルへと刈り込んだ前作に今一つ乗り切れなかったこともあり、年だけを重ね大人になった彼女や彼らが真の通過儀礼を果たすための代償をペニーワイズに支払うその痛みと哀しみは、この大人篇においてようやく純粋な身の丈として沁み渡ったように思うのだけれど、死とセックスのオブセッションがイノセンスを殺していくアメリカの蒼ざめた神話をデリーという町の衰亡に重ねていくマクロコスモスを、こんな風にかいつまんでイベントムーヴィー化することの必然と切実が最後までワタシには見つからないままだったように思ってしまう。ホラー映画としてはなるべくペニーワイズを登場させねばならぬとはいうものの、ならば『ファンハウス/惨劇の館』で事足りてしまうよねという野暮を透かすように臆面もなく『レディプレイヤー1』ばりにホラーの断片を切り貼りするどころか、ミセス・カーシュのシークエンスではシャワーキャップの裸踊りなどほとんど『インシディアス』の瓦解する恐怖すらをまんま引用する豪快さ(ミセス・カーシュのあからさまなエリーズ寄せ!)が愉しくはあったものの、それぞれが儀式のアイテムを探すエピソードではさすがにネタ切れが否めないままこれが人数分だけ繰り返されることになるのかと、あろうことか『エンジェル ウォーズ』の宝探しイベントすらを思い出す始末で、ホラー映画にとって「弛れ」を越えた「飽き」はほとんど致命傷といってもよく、中華料理店あたりでの何かは知らぬが更新されそうな気分はここで霧散したといってもいいだろう。縦糸と横糸をありえぬ配色で偏執的に織り込むうち、ある瞬間ふっと予期せぬ文様がそこに浮かび上がって恐怖と希望が加速するのがキングの長篇を読む醍醐味なわけで、その文様だけを手に入れたところでそれは一匹の亀であり一匹の蜘蛛でしかなく、いずれ負け戦であるとするならばいっそキューブリックのように戦いのルールを変えてしまうくらいのヴィジョンで塗りつぶして欲しかったと思ってしまうのが正直なところだし、そしてそれは第一稿の時点で「頼むからワーナーはこれをこのまま映画にしてくれ」とキングに絶賛されたフクナガ版のシナリオと彼のヴィジョンであったのは言うまでもない。逃した魚は大きすぎた。
posted by orr_dg at 17:23 | Comment(0) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: