2018年11月27日

イット・カムズ・アット・ナイト/地獄へ道連れ

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オフィシャルサイト

※妄想を書き散らしているため未見の場合ノイズになるはずなのでスルー推奨

弱いものから狙われていくのだとしたら祖父の次にトラヴィス(ケルヴィン・ハリソン・ジュニア)が絡め取られていくのがホラーの常で、日々に費やすすべての理由が今日を生き延びることでしかないとすれば、では自己の実現や達成は見果てぬ夢でしかないのか、そもそも自分は何のために生をうけてここに在るのか、そんな大それた命題でなくとも、いったい自分の未来に恋愛やセックスは存在するのかどうかは17歳の少年にとって何よりの一大事だし、となればキム(ライリー・キーオ)のTシャツに薄っすら浮かんだ乳房ですらが驚異であり脅威となる夜がいつしかトラヴィスを手中に収め噛み砕いたとしても、その運命に何ら不思議はないだろう。さして謎解きに意味はないとは言え、父ポール(ジョエル・エドガートン)があるシーンで口にした夢遊病という言葉が耳に残ったことや、劇中で幾度となくそれもわざわざスクリーンサイズを変えてインサートされるトラヴィスの悪夢のことを思い出してみた時、夜の森に愛犬スタンリーを探しに行き、感染したスタンリーを持ち帰って赤いドアの部屋に置いたのは夢遊病のトラヴィスではなかったかと思っている。そうしてみると、その夜半に起きた騒ぎの辻褄、記憶がおぼろげに戻ってきたアンドリュー(グリフィン・ロバート・フォークナー)が犬を運んでいたのはトラヴィスであることを両親に話し、トラヴィスの感染を知ったウィル(クリストファー・アボット)とキムは慌てて家を出ていこうとする、が合うように思うのだ。ただそのこと自体はとりたてて重要というわけでもなくて、ワタシたちの破滅はいつだって自滅に他ならないことを淡々と突きつけてくる自虐と被虐とが手を取り合ったような口調にかわりはなく、ハネケはホラーであるという点においてこれは得も言われぬホラーであり、光年の彼方へ断絶するエンディングの完璧さには思わずクカッとかいうおかしな笑いが漏れたのだった。ここ数年で顕著なポストホラー系ムーヴィーに共通する90分や100分でかわせる恐怖など恐怖ではないという恐怖の永続性は、恐怖の源がワタシ達の在り方そのものと切り離せないことを告げているように思え、いつの時代もホラームーヴィーが現実のサンドバッグとなってきたことを考えてみれば、それはこの世界で生きていること自体が恐怖に他ならないという時代の顕れであり、好きな人とのキスもセックスも知らずに逝ったトラヴィスの怨念がまた少し世界をどす黒くしたことをワタシ達は覚悟するしかないのである。
posted by orr_dg at 02:45 | Comment(0) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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