2018年06月05日

犬ヶ島/きみが吠えればキャラバンは進む

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あけすけに言ってしまえば、『グランド・ブダペスト・ホテル』を観た時に書いた“前作『ムーンライズ・キングダム』でも顕著だったシンメトリーのフィクスによる緊張と横スクロールによる緩和、感情を記号化したキャラクターのミニマル、夢の記憶を彩色したような色彩”“これは前作(『ムーンライズ・キングダム』)でも感じたことだけれど、この映画のすべてが『ファンタスティック Mr.FOX』ばりのストップモーションアニメに置き換え可能である”という感想メモから特に更新されたこともない、結果として見事に置き換えられたストップモーションアニメだったのである。「悲しき熱帯」的な揶揄をねじ伏せる強迫観念的なディテイルの躁病的な奔流に、特に日本人であればその度外れた幻視に驚愕しないわけにはいかないし、人間の最良の友たる犬たちを中心に据えることでたやすくあけっぴろげに距離を詰めてくるのも確かではあるものの、何しろ今の日本で生きる者には小林市長が見せる改心に裏打ちされた公平さへの性善と楽観こそがこの映画最大の絵空事に思えてしまう点で、何だかうなだれざるを得なかったのである。結果的にはこれがイノセンスによる革命であったことが告げられるエピローグで寓話は完結するのだけれど、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』から『ファンタスティック Mr.FOX』まで続いた「父帰る」のテーマを完了して以降、大人の教科書、あるいはユニヴァーサルな知育絵本として、美しく明かりの灯る人生のルールを忘れがたい挿絵のようなフィクスで焼き付けるポスト構造主義的な方法論の洗練にウェス・アンダーソンは殉じ続けるのか、もはや『ホテル・シュヴァリエ』の沖に流された孤独は役立たずの自家中毒でしかないのか、正直に言ってしまうとワタシはそれがちょっとだけ寂しい。
posted by orr_dg at 17:43 | Comment(0) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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