2018年04月26日

レディ・プレイヤー1/夢を見ろ、空を見ろ

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「長いものに巻かれるな」「生きていく手ざわりは現実にこそある」たったこの2つを言うためにここまでド派手な花火を打ち上げてスマホにうつむく顔をふりむかせては、まるで子供にひらがなの口調で言い聞かせるような映画を撮らなければならなかったスピルバーグの切実に、どこかしら『ペンタゴン・ペーパーズ』と背中合わせになった性急さを感じたりもしたわけで、高みからしたり顔でビラを撒くのではなく相手の陣地で同じ目線に立ってそれを可能にするスピルバーグの五感がやはり尋常ではないことをあらためて実感するのだけれど、だからこそスピルバーグは昏く変容していく世界に対し誰にも増して怒りや苛つきと共に感応し、その反撃として最も得意な方法で異議申し立てをすることを決めたのだろう。スラムと言ってさしつかえないスタックされた集合住宅の描写を含め、オアシス外の世界がスピルバーグにしては平坦というかことさらディストピアを強調しないのもこれが階級闘争の図式に閉じ込められてしまうのを嫌ったためだろうし、あくまで向き合う相手は自分自身であることを念押ししたかったということになるのだろう。そしてこの映画でクロスオーヴァーするとめどないキャラクターたちに邪気なく反応するであろう世代を考えてみれば、いったいこの映画が誰に向けられているのか、それは少なくともウェイド(タイ・シェリダン)やサマンサ(オリヴィア・クック)のような若者でないことは言うまでもないし、それら世代に対して「長いものに巻かれるな」「生きていく手ざわりは現実にこそある」と言わねばならない現状に、大人になることを要求されなかった大人たちに抱くスピルバーグの危惧と懸念が透けた気がしたのである。したがって、イースターエッグに触れて涙を流すウェイドを目の当たりにして銃を下ろす改心するヴィランとしてのソレント(ベン・メンデルソーン)こそが実はこの映画の主人公だったとも言えるわけで、美味い飯が食えるのも現実こそがリアルだからなんだよなと小さく笑って消えていくハリデー(マーク・ライランス)も含め、君ら大人が正気であってこそ若者がクリエイティヴでいられるんじゃないかというスピルバーグの檄が意外なほど刺さってきて、この国においては今作と『ペンタゴン・ペーパーズ』が立て続けに公開される僥倖をあらためてかみしめてみたのだった。それにしても『レゴ ®バットマン ザ・ムービー』でも今作でも驕った文明の犠牲者キングコングがヴィラン扱いされるのがどうにもしっくりこないわけで、いっそのことメカニコングなら良かったのにと、あのメカなんたらなど足下にも及ばない超絶クールなデザインを世界に知らしめる機会を失したのがいささか悔やまれる。とはいえ、アルテミス=サマンサが投げつける手榴弾がまさかのマッドボールだった瞬間に軽く帳消しにはなったんだけど。


posted by orr_dg at 19:33 | Comment(0) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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