2018年04月24日

アンロック 陰謀のコード/私は冗談の通じない女

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ノオミ・ラパスがCIAの尋問官を演じるとなれば、『4デイズ』のサミュエル・L・ジャクソンにリターン・オブ・リスベットとしていったいどこまで迫れるものかと胸はずませてしまうのが人情というものだろう。とは言え人情というものはそれぞれに事情があるようで、アリス・ラシーン(ノオミ・ラパス)にとっての尋問官はあくまで側(がわ)に過ぎず、彼女が放り込まれるのは精神を切り刻む神経戦というよりも諜報は踊るとでもいう狂騒曲の流れるダンスフロアであって、そこでは誰もが落ち着きのないステップで息を切らしては趣もへったくれもなく喘いでいたのである。何つうか人を殺しすぎたっていうか、テロとかそういうのはなんかもういいんじゃね?と急進的なイスラム教指導者が言い出したことでMI5とCIAを巻き込んで発生する泥縄のマッチポンプはその底抜けと悪趣味でほとんどコメディの領域に近づいた気もして、イギリス系モロッコ人ラティーフ(エイメン・ハムドゥーチ)と中東からの移民アムジャッド(トシン・コール)というそれなりにキャラクターの陰影を育てたはずの2人が、どちらかといえばアリスのエラー含みであっさりと殺されてしまう躊躇のなさと後腐れのなさ、およびそれを当事者のアリスですらがさほど気に留めた風もないまま、ラストにおいて彼女の前線復帰を告げるCIAヨーロッパ支部局長(ジョン・マルコヴィッチ)の車に乗り込んだアリスの表情には死屍累々の悔恨や屈託は清々しいほど見当たらないわけで、特にアムジャッドについては彼の幼い子どもまで含めた背景をそれなりに描いたあげくの使い捨てにも等しい退場への、それはいくらなんでもそれはいくらなんでもと思わず声も上ずる違和感に、そもそもが寄る辺なき諜報の世界に正気の者などいるはずがなかろうよと鼻で笑われた気もしたのである。してみると、いささかオーヴァーアクトとも言える身のこなしでフィクションを助長し続けたジョン・マルコヴィッチはこの映画を真顔で演じることの不粋をはなから見抜いていたわけで、彼にとってはさすが余裕の暇つぶしであったというしかない。としてみれば、オーランド・ブルームもトニ・コレットもマイケル・ダグラスでさえもどこかしら半笑いの風情を終始漂わせていた気がしないこともなく、ひとり悲壮な面持ちで密室の尋問劇とはまったく関係ない撃って殴って捕まえてのアクションを孤軍奮闘繰り広げたノオミ・ラパスが、劇中と同様ドッキリを仕掛けられた犠牲者にも思えてきたのである。いかなるサイズの映画であっても観客の手の届く範囲に縦横高さを縮小しては親密な手ざわりを届けてくれる彼女のB級力はワタシの頭にピーター・ウェラーのそれをよぎらせたりもするわけで、それはそう誰にでも許されていない希有な能力であるのは間違いがないところであって、今作でも新宿ミラノ感、あるいはシネパトス感といった共犯関係を存分に確認させてもらったのであった。うらぶれた駐車場に降り立ったトニ・コレットの緊張に溢れたバストショットを捉えたカメラが引いていった瞬間、目に飛びこんでくる膝丈やや上のフレアスカート姿の凛とした颯爽がベストショット。まるでアニー・レノックスのようにクールかつバウンシー。
posted by orr_dg at 17:53 | Comment(0) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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