2015年08月23日

人生スイッチ/雨降って血固まる

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さて久しぶりに取りかえしのつかないことをするかな、と言ってカヴァーを取り外したヴィデオデッキの内部に納豆をたらぁ〜っとこぼしては、取りかえしつかないことをしてしまった!と叫ぶのはコージ苑の名作エピソードだけれども、この映画の快感は自分のヴィデオデッキを台無しにすることなくその欲動を痒いところに手が届くように叶えてくれることによっている。しかもそれが必ずしも破滅をもたらすわけではないとを告げることで、因果応報のお仕着せを巧妙に回避する人生のランダムをスリルとサスペンスに置き換える脚本と、それを映像のダイナミズムで煽ることでこの七転八倒阿鼻叫喚の地獄絵図に宗教画の神々しささえ与えて人間賛歌の域にまで高めた監督のビジョンと手腕にはただただ敬服するしかなかったのである。すべてのエピソードに通底する復讐の気分は運命を自らが采配することで神の代理人を自任する愚かと傲慢の現れでもあるのだけれど、ではその先にあるのは暗闇と憎悪の連鎖でしかないのかという問に対し、混沌の中にあって真のおのれを知ることで他者への愛が生まれ浄化と再生をもたらすのだという回答を示したエピソードを最後に据えることでこの映画を痛快と爽快で包んでしまうやりくちは、まるで練達の伝道師による恍惚と陶然に満ちた説教のようにすら思ったのである。それもこれもそのすべては、いつだって復讐という行為には悪趣味がつきまとうものであるという監督のあまりにも正鵠を射た大前提があるからこそで、その手抜かりのなさは感動的といってもよく、すべてのエピソードを最終的に串刺しにするアルトマン的群像劇としての妙などかなぐりすてながらパルムドールの作品賞にまでノミネートされたのは、何よりその下世話に魅了されたからにちがいないと思っている。呪いのかけ方としては第5話「愚息」の寄る辺のなさへワタシはひれ伏すように震えた。
posted by orr_dg at 23:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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