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昂奮するとお尻をパンパン叩くのは女の人も一緒なんだなあと感心していたら、フレームから見きれていたお尻がパンと叩かれる瞬間、カメラがあわててお尻にむかってパンしたものだから何だかおかしくて笑ってしまったのだけれど、この映画が主に、恋愛が右肩上がりのころの愛情とセックスががっぷり四つに組んだパワフルな時間を捉まえることに躍起だったのを思えば、そうした不躾もこの大騒ぎのうちに許される気がしたのである。とはいえ、セクシュアリティとアイデンティティを否応なしに紐付けされてしまうマイノリティの重荷からは彼女らとて自由なままでいることはできず、何よりアデル(アデル・エグザルコプロス)にとっての自由は好きな人を好きと言えるただそれだけであったにも関わらず、エマ(レア・セドゥ)は本当の自由とはあなたが完全な個としてあるその先にしかないとすれ違っていく。2人が出会った時のサルトル・トークですでにエマはそうした背景の人であることが描かれているし、彼女の家族のことさらリベラルな描写やカミングアウトしたアーティストとしてのキャラクターが、あえてワタシのようなヘテロが思い描くゲイのステレオタイプとされているようにも思うのは、生活者としてのアデルの普通がワタシたちとなんら変わりのないことを鈍感な観客であるワタシたちに念押しするためであったように思う。だからアデルはワタシたちヘテロがそうであるようにセクシュアリティとアイデンティティの関係にはなかなか意識が届かないままだから、エマは自ら進んで“女”の位置に収まりたがるアデルに次第に苛立ち、自らが開いたパーティでまるでアデルを賄い婦のように扱って平然としていたのはおそらくそれら残酷な衝動によっていたのだろうし、記憶に間違いがなければこのシークエンスからエマの髪はブルーでなくなっている。エゴン・シーレのことは忘れてしまうけれど美味しいボロネーゼを作ることはできるし、表現の欲求に駆られることはないけれど仕事への倫理感を切らすことはない、そんな風にまっすぐ生きる知恵はあるのに人生の半分が空っぽになってしまったアデルが、生徒を引率した海水浴場で子供たちから離れて独り海に浮かぶシーンで、このままフェイドアウトして終わったら『グッバイ・ファーストラブ』みたいだし、こういうニヒルはちょっと似つかわしくないなあとほんの一瞬身構えたのだけれど、その後で用意されたエンディングは、私は完全にひとりぼっちになってしまったけれど、私はどうしてそれを畏れているのだろうか、だからそれから逃げ切れないのだろうか、逃げることができないのならそれを手なずけるしか道はないのだろうか、と千切れる想いのままに舗道を歩いていくアデルがまとうのはセクシュアリティやマイノリティとはまったく関係のない場所からわきあがった存在の不安とでもいうべき孤独の把握で、それは冒頭のサルトルへとつながっていくようにも思えるアデルの後ろ姿であり“第1章と第2章”というフランス語原題のサブタイトルと合わせてみれば、この先の道は世界中のアデルがそれぞれに歩かなければならないと言う、終わらない物語の始まりを告げていたのだろうと考える。そしてそれは、アデルをとりまく偏執的な青の配置が、同級生の女の子にくずれおちるような拒絶を受けたあとの赤の配置や、子供たちを受け持つ教室に氾濫する無数の色を追い立てた挙げ句、最後には陰鬱で息も絶え絶えの青いドレスの中に葬られていくことで青の時代が終わりを告げていたことからもうかがえて同様である。ところで、この映画に限らずどうしてゲイバーの中ではみんなイチャイチャちゅうちゅうしている描写が多いのか、それがどれくらい実態に即しているのか、あるいは単なる記号的な誇張なのか、それが気になってノイズになったりしてしまうことも、それはもう『クルージング』まで遡ったところから少なからずあるのだけれど、今作を観てああそうなのか、と思ったのは、役名があるとすればゲイバーの感傷的な中年男とでもいうほとんど通りすがりに近い男が「本当に愛した相手であれば性別など超えてしまうし、そんな相手に出会えたら明日死んでもかまわない」と自分語りでもするかのようにアデルに伝えていて命がけで人を愛する覚悟があるかと問うているのだけれど、それは抑圧をかいくぐり終わらぬ闘いを強いられる恋人たちの切ないメランコリーにも思われて、要するにああした直接的で刹那的な描写は解放区における戦時下の昂揚として捉えればいいのだろうかとそんな風に考えたのだけれど、フィクションの描写としてワタシはそれで納得してもいいのだろうか。とは言え、ではゲイバーに行かない人は闘っていないのか、現にアデルは孤独な闘いを続けていたではないかと言われれば押し黙るしかないはなはだ短絡ではあるのだけれど。
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