2013年06月12日

最近でもないけど読んだりした本

4480430377生ける屍 (ちくま文庫 て 13-1)
ピーター・ディキンスン 神鳥 統夫
筑摩書房 2013-06-10

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4163821104色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
村上 春樹
文藝春秋 2013-04-12

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4903500888真夜中のセロリの茎
片岡 義男
左右社 2013-04-05

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4003246225聖なる酔っぱらいの伝説 他四篇 (岩波文庫)
ヨーゼフ・ロート 池内 紀
岩波書店 2013-04-17

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サンリオSF文庫のボスキャラがついに復刊。アンナ・カヴァンといい「たんぽぽ娘」といい今年の地殻変動は近年にない激しさで何とも言えずスリリング。これはまだ読み始めたばかりだけれど、冒頭の“「非常に重要な仕事だよ、デビッド」所長は言った。「君流に言えば最高度だな」”の“最高度”にふられた“トップノッチ”のルビで伊藤計劃を早々に思い出したりもしてる。そう言えば「ハローサマー、グッバイ」の続編邦訳はどうなったんだっけ作者の投影はあくまでメンターに為されることで、主人公は作者の責を負うことなくイノセンスの被圧者としてくり返し登場することが可能となる上、母であり姉であり教師であるメンターとの関係にセックスの側面を織り込むことで密やかでリアルな風(ふう)を担保するといえば「ノルウェーの森」からこちらのデジャヴなテンプレートであって今作はもうその手癖だけで成立してしまっているともいえる貫禄のハルキクインロマンス。さすがにもうメンターにしろ主人公にしろどちらのサイドにもワタシの身の置き所はないのだけれど、爛熟したリーダビリティで読み物としては一気に読ませる。ところで村上作品における律儀なオーラルセックスはオブセッションにしろ何にしろ誰かがどこかで解題してるんだろうか。リストの関連CDもセールスが動いてるみたいだけれど、もし仮に暴力温泉芸者のノイズを愛でる主人公が描かれて、そのあげく暴力温泉芸者のCDが売れまくったとしたらそれはそれですごく愉しいと思うおのおの一文は有り体をハイデフなクラリティで綴りながら、それが物語として集合してみるとアブストラクトとしかいいようのない模様に展開するというアーバンマジックリアリズム(すごく胡散臭いな)はそのラディカルで村上作品を圧倒しており、帯にでかでかと記された“「すごいよ、ヨシオさん!」岸本佐知子さん絶賛!!”という惹句は大仰でもなんでもない。赤背の角川文庫のイメージでしか片岡義男を知らない人には及びもつかない自由、それはフィクションについてまわる代償や担保からの自由という意味だけれど、を今の片岡義男は手に入れていて、もしも村上作品の良心的な読者が手を出したりしたら火傷して腹を立てるにちがいないほどである言うまでもなくルトガー・ハウアー主演作品の原作だけれども、ドイツ系ユダヤ人として国境と人種の混迷およびナチスの勃興に地獄を予感し、デラシネとしてヨーロッパを逃走し続けた作者の屈託が透徹された筆致で描かれる寓話と幻想に満ちた作品の、静かに美しく朽ちていく階調が深々と胸に沁みる。それらの中で一編のみ異彩をはなつ「蜘蛛の巣」は1920年代前半のナチス勃興前夜に憎悪と排除が世界の意思統一をしていく黄色い空気を、押し殺した怒りで蒼白になった同時代の視線で冷徹に捉えていて、諧謔に押し込めようとしながらも底知れない不安にいつか覆われてしまう虚無が今現在のこの国になじみすぎる点で作品の尖度が思いがけず効いてしまっていて、それが何とも薄ら寒くて怖ろしく思えるのである。
posted by orr_dg at 13:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | Book | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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