2011年12月25日

宇宙人ポール/We are not quite so alone

宇宙人ポール
オフィシャルサイト

こんなもんThe Only Onesのアレが流れた時点で早々に勝ったと思うに決まってるわけで、まあそれはそれとして、やはり『SUPER 8』の敗因が“ありがとう”成分の圧倒的な欠如と、その結果として宇宙人を宇宙“人”として描く必要なしとしたスカした余裕であったことがこれを観た後だと小気味いいくらいに分かる。この“ありがとう”は感謝の念とかそういうことよりも、それを言える相手と言ってくれる誰かとつながっているという手触りのようなもので、それが自分の人生には足りてないことを知っている人間がそれを切実に欲してみせる時、サイモン・ペグにしろニック・フロストにしろ、グレッグ・モットーラにしろ、彼らを信用してやまないのは、そのせいでぽっかり空いた穴についてなら僕等も馴染みがあるし、その埋め方についてもちょっといい方法があるんだけど知りたい?と笑って教えてくれるからに他ならず、この映画はそういうやわらかなアドバイスで出来上がっているものだからこちらも思わず“ありがとう”と返してしまっているのである。60年を監禁されてなおかつ生体解剖の憂き目に遭いながらも、ポールの地球最初で最後の旅はそうした“ありがとう”に彩られていて、出会った人々に新しいつながりを与えることで爽やかな孤独とでもいう自由をまき散らしながらそれぞれの自縛を解放していく。といった筋立てだけでもかなり深々と絆されてしまうところに、エクストリームでシニカルだけどジェントルなギャグが手際よく詰め込まれているものだからもう辛抱たまらんわけで、『脱出』や『激突!』くらいならともかく『ロレンツォのオイル』までネタに仕込むはしゃぎまくりと、やはり“ありがとう”を映画に託して来た御大のカメオによる悪ノリ、そしてそれらもろもろの総仕上げに登場してくるあの人の、ああ、初代ポールもこうして…というその排除が示すような香しき悪意についてもあちこちきちんと重心を残しているからこそ、それらをかいくぐったポールの“ありがとう”に思いの外わしづかみにされたわけで、正直言ってちょっとなめてましたごめんなさい。そしてその“ありがとう”はアメリカ映画とそれを生んだアメリカという国へ向けた憧憬の行き先でもあったからこそワタシもそこに邪気なくのっかっていけたのだし、この映画がそうやって既に一回りして助走をしたあとで派手に転がっていることの昂揚はアメリカ人よりもワタシたちみたいなアウトサイダー(そういえばかつてalien=外国人だったしね)の方が共有できることを思えば、アメリカの内なるアウトサイダーが撮ったアメリカ映画に夜道を照らしてもらってきたワタシたち日本人がこの映画を愛してしまうのは当然の成り行きなので、是非劇場へ行って自分の出自などを確認してくるべきである。くどいようだけれど、エイブラムスはアウトサイダーでいる必要がなかったわけでそれが『SUPER 8』の限界だったことを思えば、あそこで足りなかった成分はすべてここにある上に何しろ御大のお墨付きなので、それについてはもうゲップが出るくらいおかわりすればいいよという感謝しきりの傑作。
posted by orr_dg at 21:43 | Comment(0) | TrackBack(2) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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やっとこさ観た宇宙人ポール でもETは未見のワタシ
Excerpt:  先日自宅の射程距離内で件の映画がかかったのでやっとこさ観に行くことができました
Weblog: BARIの毎日?
Tracked: 2012-02-18 23:34
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