2011年12月20日

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル〜ゴーグル、それをしろ!

ゴースト・プロトコル
オフィシャルサイト

ボロ雑巾のようになるまで走って跳んで転がって殴り殴られ落下して吹き飛ぶイーサン・ハントの、でもそこにあるのはプロフェッショナルの矜持でもなければ当然愛国の大義であるはずもなく、ではいったい何が彼のエンジンになっているのかと言えば、全てを終えた後でオレは必ず生きて還らねばならない、生きて還ってオレの人生が今日も一日幸せであったかどうかを知らねばならない、そしてやはり幸せであったことを知って小さく笑ってみせるのだという焦がれるような感情であって、それはミッションというよりは約束の熱量を持つものであったことがわかるエンディングはまさかこのシリーズで灯るとは思わなかった親密で温かいきらめきに溢れていて、この映画で終始途切れることのないフォーカスされた感情の仕込みとその収束はブラッド・バードならではの正しい者の手によるウェルメイドであったように思う。プロット自体はひねりがないわりにこの映画が不思議に右往左往する感じは、アクション原理ならばカットとカットの間に埋もれてしまうシーンをエンジンブレーキでもかけるようにスラップスティック気味に突っ込んでいるからで、ドバイのブルジュ・ハリファでイーサン・ハントがクライミングをせざるをえなくなるくだりやウィリアム・ブラント(ジェレミー・レナー)によるコメディリリーフぎりぎりの踏ん切りの悪さ、そのブラントとハントが貨車に飛び乗る際のじゃれあうようなドタバタ、そしてチームのメンバーで最初にスクリーンに登場するのがベンジー(サイモン・ペグ)であり、彼がチョイスしたディーン・マーティンが決定したムードが醸す“いっちょ騒いでやらかすぜ”宣言の真顔でふざける感覚はおそらくブラッド・バードが持ち込んだリズムに思われて、アクションそれ自体を目的にするのではなくそれもまた血肉の伴う会話の息づかいとして捉えていたのは、まずはこちらで動かしてみないと何も始まらないアニメーションに感情を託してきた監督の皮膚感覚によるものなのだろうし、役者の血の温もりそのものでアクションを温めるやり方はグリーングラスが示したアクションの極北に対する解答として成立していたようにも思う。まあそれもこれもトム・クルーズの成熟した諦めの悪さ、すなわち知恵そのものと化した肉体のスイングによるところが大きくて、ああまで賢そうに走れる役者をワタシは他に知らない。ジェレミー・レナーは腕まくりのワイシャツ姿というスクエアに押し込んでみるのもアリだと分かったし、それとこの人のサウスポーはなぜだか妙に艶っぽい気がする。サイモン・ペグは終始ドラえもんであったよ。ポーラ・パットンは特にカクテルドレス以降、いったんそう思ったら女装したロック様にしか見えなくなってまあそれはそれでかまわず愉しい。それにしても前作でのJJ、今作でのブラッド・バードの起用に加え、この監督がいつでも自前のバランスを取れるようにサイモン・ペグをサイモン・ペグのまま全面投入した決断が実は一番の勝因にも思えてやはりトム・クルーズの慧眼恐るべしといったところだし、その本人である自分をネタにどこまでスターがスターのままで映画は映画たり得るかを人体実験してみたといえるくらいのラディカルを漂わせつつ、何と恐ろしいことにその実験が成功してしまっているものだからちょっと吃驚していて、こういう映画に客がバカスカ入れば何だか幸せな気分になるので是非そうなって欲しいと思う。
posted by orr_dg at 00:16 | Comment(3) | TrackBack(1) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
観ました観ました。

いい映画だったと思いますよー。
前作がサラリーマンのスパイみたいで、
健全なイーサンだったので、
わたしはこちらの追い込まれたイーサンのほうが好きです。
おしまいに見ることが出来たあのあたたかな笑顔は、
ちょっとごほうびをもらった気分でした。

メリークリスマスです♪
Posted by セイ at 2011年12月25日 15:13
入力しても
コメント欄が更新されないのですが
入ったかしらん?
Posted by セイ at 2011年12月25日 15:29
メリークリスマス(もう遅いですが…)、セイさん
思いがけず足元のしっかりした映画でしたし
スターがスターらしいオーラを出しまくる凄みが愉しかったです
ああいう風に主演俳優の笑顔で閉じる映画も久しぶりな気がして
ハリウッド王道の余裕が心地良かったですね

心の内のどこかだけは穏やかに年の瀬をお過ごし下さい!

Posted by オア at 2011年12月26日 00:14
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