2011年05月20日

最近読んだ本〜佐藤泰志と色川武大

4309410790きみの鳥はうたえる (河出文庫)
佐藤 泰志
河出書房新社 2011-05-07

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4309410731そこのみにて光輝く (河出文庫)
佐藤 泰志
河出書房新社 2011-04-05

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4094086110黄金の服 (小学館文庫)
佐藤 泰志
小学館 2011-05-10

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4094086048移動動物園 (小学館文庫)
佐藤 泰志
小学館 2011-04-06

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あちこちで一冊ずつ探しながら読んでいた頃からすれば、こうして一気に読みきってみることで、特に性と暴力という断面の“肉体の周辺”についてのあしらいが静かに烈しく研ぎ澄まされていくのがよく分かる。ただ一貫しているのは、どこかへ行って何者かになるその途上の茫昧、要するに青春の正体なわけだけども、その“どこかへ行って何者かにならねばない”というオブセッションが佐藤泰志をことさら駆り立てていたように思えることで、したがって既に“ここでわたしであること”の達成に手が届き始めていた「海炭市叙景」から佐藤泰志を知った方には、特に初期作品での“何者かにならねばならない”という息づかいを描く時の鬱屈と技巧の走りがやや過ぎるように思われるかもしれない。それは同年代の作家である村上春樹が、何者かになる意志をクールにひた隠しながらどこかへ立ち去ろうとする青春を提示していたことに比べてみれば無粋に映るかもしれないけれど、例えば青春の内爆する群遊をつかまえた「きみの鳥はうたえる」と「黄金の服」を読んでみれば、生を描くほどに死が匂い立つという点で両者はさほどかけ離れていたわけでもないことがよくわかると思う。最後に一つ、尋ねられもしないのに勝手に答えるけれど、「海炭市叙景」以前ということで言えば「そこのみにて光輝く」の第一部がやはり一番ぎらぎらキラキラと美しいように思える。

4087714012いねむり先生
伊集院 静
集英社 2011-04-05

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伊集院静の自伝というよりは、「狂人日記」に取り組んでいた頃の色川武大晩年の評伝としてとても大切に思いながら読み終えた。かつて「わたしは伊集院となら結婚してもいいと思っています」と真面目な顔で戯れていた話などを思えば、著者以外にしたためることは出来なかったであろう物語には色川武大の優しさと凄みが同居していて、神楽坂の神社の境内で一人ぽつんと世界の寂寥に対峙する姿を覗き見る場面など恐ろしいくらいのドキュメントになっている。色川武大の読者は必読のように思う。
posted by orr_dg at 19:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | Book | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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