
ワタリウム美術館
病気によって音楽や映画の現場からリタイアしていたことは知っていたし、現在は絵筆をとることで表現の手段としていることも知っていた。ただそれは、ワタシにとって80年代のそれなりのポップ・イコンであった彼の両翼をもがれた結果としての代替行為程度にしか正直言って思っていなかったから、こういうことになっていて少し吃驚したというかふらついたというか、だってバスキアなんかともつるんでた人だったんだもんなあと、何だかいろいろ熱っぽい気持が胸にこみあげてきてちょっと困ってしまったりした。それくらい彼の描いた絵にはしなやかな生気と確かな意志と軽やかな凄み、それに昔なじみの諧謔と皮肉とが込められていて、そして何より映画やジャケットのイメージから勝手にしつらえていたモノクロのイメージなど一瞬ではらうような深々とヴィヴィッドな色で溢れていた。こういう想いは彼にしたら余計で邪魔なだけかもしれないけれど、無力なうちに埋め立てられたインスピレーションの泉を以前とは違う方法で毎日少しずつ掘り返し、わずかでも湧き出した流れをつかまえて心に注ぎ、どんな花が咲いて実を結ぶのかも分からない新しい芽を育ててそうやって彼が気が遠くなるような歩みで丹精した美しい秩序を持つ庭の真ん中であたりを見渡している気分だった。でもね、こんな20年以上持ち続けてる面倒なバイアスなんかなくても、というかそんなものはない方が彼の絵はきれいにすっと入ってくる気がするし、それはやはり鬱屈でがんじがらめになってた頃に観た「ストレンジャー・ザン・パラダイス」で、口をすぼめて背中を丸め飄々と涼しい顔で屈託をやりすごして遁走してみせた彼の身のこなしそのものであって、想像を超えて困難な日々を経ながらもそれを手放さなかった彼が創り出した小さな奇跡の数々がワタリウムにつめこんであるから、ワタシは5月16日までにまだ何度かそれを見に行くつもりだし、気持が固まったらまたちょっと物欲系の無茶をするかもしれないなあと思ってる。お金の問題なんか小さい小さいと思わせるところがまた危ないんだけどもなあ。
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全くもって、正しい評論!
そうなんですよね、80年代の彼の(それもほんの一部の)イメージを未だに引きずっているのが、私も含めた80'sサブカル世代のダメ加減というか...。「Down By Low」以降のジャームッシュが、彼に対してしつこくチンピラ・イメージを求めてくることにウンザリしてた、というエピソードも何だか頷けます。
90年代のソロ・アルバムとか、マーヴィン・ポンティアックとか、ちゃんと今のうちに再評価しておかないと、何だか手遅れになってしまうような気がしてなりません...
>私も含めた80'sサブカル世代のダメ加減というか
ほんとに往生際が悪いんですよねえ…
いまだに別の身の拠り所が見つかってなかったりしますから
余計に始末が悪いです
マーヴィン・ポンティアックといえば
リリース時の渋谷タワレコのPOPカードで
ジョン・ルーリーについて一言も触れてなかったので
もしかしてフェイクって気づいてないのか?と
ジョン・ルーリーの新譜だと言えば少しは売れるのにと
もったいなく感じたことなど想い出します