2010年02月17日

ブラッド・メリディアン/コーマック・マッカーシー

4152090936ブラッド・メリディアン
コーマック・マッカーシー
早川書房 2009-12-18

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「平原の町」から此処を経ての「血と暴力の国」であったなら多少陳腐とはいえ読者としてのストーリーは探れるのだけれど、国境三部作より以前にしてこの絶頂に達していたということでやはり戸惑いはする。国境三部作はこの神話の翻訳なのだと思えばそれで多少は落ち着くにしても。狂言回しを装って理を語る判事の独演を拾い読みすればこの本の思想はおおよそ明らかで、それを実地検証するのがグラントン隊ということになる。暴力も戦争も初めから我々と共に在ったものだ、言うなればお前らの神がお造りになったものだ、崇拝しないでいいのか、え?言いつつバンバンビガロあるいはフランク・ブラックの風貌を持つ判事はすれ違いざまに世界の風景を一変させていくわけで、それが浄化とすら言ってもいい厳かさで行われていくことに惑いつつ昂奮し目を閉じないワタシ達の正体こそが判事であるという堂々巡りのバランスが世界を持続させているのだと、返り血を浴びながら穏やかに諭すその説明に反論する術を今のところ持ち合わせてはいないのは確かだ。執拗に判事に追われ最後にはその泡が弾けた元少年の抵抗は、判事を悪と呼びきれないように善などでは到底ないのだけれど、何か小さな別のバランスの萌芽であったことは確かで、国境三部作がその観察の記録となっているのは間違いない。そして判事がアントン・シガーとして再び降臨したのは言うまでもなく、となればすべてはここから始まったというしかない名状しがたき産声の記録に頬を張られるのは避けては通れない道行きかと。
posted by orr_dg at 13:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | Book | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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