2010年01月25日

Dr.パルナサスの鏡/明鏡止水にゃまだ早い


Dr.パルナサスの鏡
オフィシャルサイト

「ブラザーズ・グリム」に比べれば重心は低いし手癖にあふれたガジェットも満載だしで、おまけにトム・ウェイツまでキャスティングしてるというのにこの行儀の良さというかよそよそしさというか、少し物わかりが良すぎない?ギリアムも映画も。もう幻視のヴィジョンがフィルムの内と外で拮抗していくスリルを求めても仕方ないということなのかなあ。仮にあの不幸な事件がないとすればトニー(ヒース・レジャー)が鏡の向こうで悪魔(トム・ウェイツ)と丁々発止することで生まれたかもしれない酩酊がもう少し映画をふらつかせたかもしれないにしても、パルナサス博士と悪魔の馴れ合いにしろ誰も彼もがどこへもはみ出すことがなくて、こういう風な現状肯定は初めての気がする。それと気になるのはギリアムの身の丈が縮んじゃったような気がすることで、風呂敷の広げ方がおっかなびっくりというか、律儀なくらいたたみ方に気を遣ってることもあってか「バロン」の暴走すらすでに懐かしく感じるくらい。ただ、「ブラザーズ・グリム」と並行するように撮った「ローズ・イン・タイドランド」があれだけの強度を持ってたことを考えれば、メジャースタジオの仕事については猫をかぶって手堅く結果を出すことに専念してコントロールフリークを封印しているようにも思えるので、となればすべては次作として構想される因縁の「ドン・キホーテを殺した男」に向けての雌伏とも考えられるし、そう思えばそれだけの余裕をかましつつこれを撮った地肩にはまだまだ期待して大丈夫な気もするから、鮮やかにあっかんべ〜と舌を出してくれるその日を心待ちにしようとは思う。寓話の入り込む余地などない切実で自由な魂のファンタジーを、この人のエゴはそれを描くためにあるんだと思ってるから、映画界はある種の義務としてそれを野放しにしないといけないと思うよ、ホントに。それで誰かがどれだけひどい目に遭うにしても。
posted by orr_dg at 19:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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