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独善の罪で自戒/自壊した魂がもう一度“私”を謳うことを許すまでの日々をピアノ線のような緊張と中間色の静謐で描いてみせたこの作品は、作家フィリップ・クローデルの初監督作であり、と同時にそうしたバイアスがどうでもよくなるほどの傑作。「屈託」というタイトルでもつけたくなるくらい完璧なジュリエットのショットから始まって、彼女の素性や過去が次第に明かされるに従い、ワタシ達は彼女の罪(殺人)が額面通りのものでないことに薄々気がついていく。そして物語はそうした観客の予感を裏切ることなく再生の陽が差し込む日々を示唆して幕を閉じ、おそらく彼の小説であればこうした着地はしなかったであろうという(予定とまではいかない)調和を生むのだけれど、ここまでの道行きでみせる冷ややかさと暖かさ、残酷と慈愛、そして喪失と再生といった拡散と凝縮を同時に描き込む手管のあまりの見事さからすれば全く不自然のない据わりで、近頃あまり縁のなかったような美しい映画となっている。そしてこれだけ過去に縛りつけられた話でありながらフラッシュバックの類が一切ないのも映画が綱渡りしていくスリルを白けさせない大きな要因になっていて、少しもぶれることのない口調の確かさと時に昂揚をままにする目筋の自由は、これが処女作とは思えないほどの映画的な手綱で操られているのに心底驚かされる。“刑務所では「不在者」と呼ばれていたわ”とうそぶくジュリエットはまさに失われたすべての体現者で、その空虚に共鳴するかのように個別の空虚を抱えた他人(妹レアの同僚ミシェル、フォレ警部、そしておそらくプチ・リスも)と邂逅することで自分の空虚にこだまする叫びに耳をかたむけることになり、そしてジュリエットに共鳴させられることで自分の空虚に向き合うことになったレアがその叫びを掴まえたことでそれは決壊し、流れる涙のか細い筋がその証として刻まれることになる。そして何より心惹かれるのはここに自己憐憫による傷の舐め合いが一切ないことで、そこに何か過剰な感情があるとすればそれは個であることの哀しみであって、彼や彼女が独りで懸命に佇む姿を励ますように捉える監督の目線こそがこの映画の類い希な美しさになっている気がする。再度、傑作。
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