2009年09月02日

犬の力/ドン・ウィンズロウ

4042823041犬の力 上 (角川文庫)
ドン・ウィンズロウ 東江 一紀
角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-08-25

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404282305X犬の力 下 (角川文庫)
ドン・ウィンズロウ 東江 一紀
たこ蒼X(角川グループパブリッシング) 2009-08-25

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これまではどちらかというとポケットの中で握った拳をガンさばきに変え、うつむきながらも目に光たぎらせて生と意志を全うしてきたウィンズロウの男達が、ここではまるでエルロイが生み出した“奴ら”のように自らを抜き身にして跳弾の権謀を血の贖いでくぐり抜けていく。というわけで何というからしからぬ力作なのである。ただ、既にエルロイの暗黒迷路に放り込まれた身からすれば、三十年戦争を描いたにしては話がいささか早すぎるきらいを感じてしまって、これはウィンズロウが卓越した語り部であるがゆえのジレンマでもあるのだけれど、エルロイを読む時の“奴ら”の人生の逐一を無理矢理見せられながら引きずられるように歩く狂ったような眩暈の感覚がやはり恋しくなってしまうのだ。ただ、後書きなど読む限りではこれが宗旨替えというわけでもなさそうだから、もしかしたらこれはウィンズロウ自身のスタイルが知らずため込んできた屈託の暴発なのかもしれず、そう思ってみればこの血生臭い物語にもなお肩入れしたくなってくるというものだし、さきほど書いた躓きみたいなもんはあくまでエルロイという異常値と比較しての話で実際のところ貪るように上下巻読み切ったのは事実であって、ウィンズロウの胸弾む新作と紹介するのはまったくやぶさかではない。まるでバトルロイヤルのように入り乱れるキャラクターにしても、今回はアーサー・ケラーとアダン・バレーラという対立軸を固定していつものように主役の足取りで陰影をつけることが出来ない分だけフックの効いた脇役が多いのも目につく。ワタシのお気に入りは、エルロイで言えばピート・ボンデュランドのごとくマイケル・マドセンを容易に当てはめることができるピッコーネ兄弟の兄貴“大桃”と、こちらはルイス・ガスマンであって欲しいと切に願う調査官アントニオ・ラモスといったところで、特にラモスは出番の割には彼を主人公にスピンオフもできるんじゃないの?ってくらい鮮烈な印象を残すので(以下、本筋じゃないけど少々ネタバレにつき自粛)。それにしても後書きでふれられている新作のいかにもウィンズロウというプロットにワクワクして仕方がないから、それを基にマイケル・マンとデ・ニーロが仕上げる映画に遅れないよう早く早くと翻訳を急かしてしまいたい。

かっこいい〜

Madsen&Guzman
posted by orr_dg at 13:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | Book | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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