2008年11月16日

最近読んだ本から、ともにオートマチックで右こめかみを撃ち抜く話

4048738941覇者と覇者 歓喜、慙愧、紙吹雪
打海 文三
角川グループパブリッシング 2008-10-31

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※白字部分ネタバレにつき注意
終わってしまった。終わっていないけれど終わってしまった。自分の在る場所を自覚し自分が在る世界を自覚し、世界の在り方を想像し自分のいない世界を想像し、そしてなおも自覚せよ、想像せよと書き綴りながら打海文三の物語が終わってしまった。当初「死者と死者」と冠される予定だったらしい本書だけれども、(構成上の)下巻最初の章における白川の行為が思いがけず物語を浄化してしまったことで、もはや死を想うなかれとその後の死を食い止めてしまったような気がしている。ああ、でも本当にもう少しだったのに。あと少しだったのに。死で閉じない物語がどう生き延びたのか知る手だてはともかく、打海文三の新作を読む機会が永遠に奪われてしまったのだと思ったら、人生の愉しみの幾ばくかを過ごす予定が狂わされたことに今さらながら気づいて少しだけ腹が立った。

4863320906モンキー ビジネス 2008 Fall vol.3 サリンジャー号
柴田 元幸
ヴィレッジブックス 2008-10-20

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まさか『ナイン・ストーリーズ』をまるごと新訳してるとは思わなかったし、別の場所で柴田元幸に為された離れ島に持って行くアメリカ文学十傑は?的な問いの回答にそもそもサリンジャー作品自体が含まれてもいなかったので、いささか唐突とも思えるこの扱いには意表をつかれた感じ。でまあ、20数年ぶりの『ナイン・ストーリーズ』を読んでみたところ冒頭の「バナナフィッシュ日和」からしてやけにあけすけな感じがしたものだから野崎訳(昭和54年9刷)をひっぱり出して再読してみたりもした。逐語的な指摘は意味がないからやらないけど、新訳での血が滲まない程度に薄皮を剥いてる感じは「コネチカットのアンクル・ウィギリー」以降も引き続いて、日常の薄膜に充満していくイノセンスの屈託と憂鬱の暴発を、シーモアの行為が重しとなって押しとどめているという印象がより強くなっている。というわけで、ここでシーモアをイノセンスの殉教者としてしまったことと結局これ以降その呪縛を解けないままでいることなど含めた解題と、なぜ『ナイン・ストーリーズ』なのかといった辺り、間もなく発売される『モンキービジネス2008 Fall vol.3.5ナイン・ストーリーズ号』で明らかにされるのかどうか楽しみにしているところ。

モンキー ビジネス 2008 Fall vol.3.5 ナイン・ストーリーズ号モンキー ビジネス 2008 Fall vol.3.5 ナイン・ストーリーズ号
柴田 元幸

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posted by orr_dg at 01:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | Book | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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