2008年09月08日

孤独の要塞/ジョナサン・レセム

4152089385孤独の要塞 (ハヤカワepi ブック・プラネット)
佐々田 雅子
早川書房 2008-07

by G-Tools


70年代のブルックリンに生まれ育った二人の少年。ある時、空飛ぶ指輪を手にいれた二人は「エアロマン」と名乗り、街を守るヒーローとして活躍するようになる。少年達の友情、別れを描く成長小説

なんていうリード文はあまりに脳天気すぎて、縦糸が「ジャズ・カントリー」で横糸が「マンハッタン少年日記」なんていうのも物わかりが良すぎるくらい途方に暮れたレセムの半自伝的作品。成長すること=逃げ出すことという現実を振り切れず、憂鬱の壁に囲まれて苛まれつつ生きることが贖罪であるかのように描かれる喪失の日々はまるでライティング・セラピーのようで、そうして過ごした800ページのラスト、イーノの「アナザー・グリーン・ワールド」をサウンドトラックに綴られるほんの数ページに示された静謐な肯定は微量ゆえに透明な純度を保ってはいるものの、必ずしもそれで逃げ切れたわけではないどころか、それまで逃げることで探し出していた道を自ら閉ざしたことにもなって、それこそがディランが過去を2人分(1人は文字通り)殺すまで背負い続ける十字架となっていたことに読了後ようやく気づくことになる。なれば、レセムの作品(といっても2作だけだけど)に通底する喪失とメランコリーの質にも頷ける気がするのだけれど、ただまあ、こんなふうに自らの手の内を晒してまで書かざるを得なかった作品ゆえの自己偏愛が、レセムという作家の輪郭を歪ませてしまっているような気がしないでもないので、まずは邦訳2作を読んでからの方がこれは楽しめるかもしれないな。あとは冒頭に挙げた2作に連なる文脈で読んでみるのも面白いとは思うけど、間違っても上記のリード文のようなSFグラフィティではないのでそこだけは取り扱いに注意して是非ともお買い求め下さい。そう、読むのは後でもいいからとりあえず買わないと。じゃないと邦訳が出なくなっちゃうから。
posted by orr_dg at 22:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | Book | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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