2008年02月12日

北極で携帯片手にキューバを想う3181ページ

4150411565ザ・テラー―極北の恐怖〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
Dan Simmons 嶋田 洋一
早川書房 2007-12

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4150411573ザ・テラー―極北の恐怖 (下) (ハヤカワ文庫 NV (1157))
Dan Simmons 嶋田 洋一
早川書房 2007-12

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[上巻575P、下巻556P]
モンスターホラー風味の正統派冒険活劇のつもりだったから、こんなに鬱屈しながら悶え転がる話だとは思いもしなかったのは読後の今でもそのまんまの気分。サディスティックでえらく内圧の高い極地サバイバルを通底音に、これはウーと雪ん子みたいなもんかと思ったら「蠅の王」的寄り道にそっち行くのかい?と思わせつつ、予想はしてたもののいきなり「アンデスの聖餐」突入で、悪いけどカタルシスないからと言わんばかりの憂鬱展開連打のあげく最後は何だかヴィジョン・クエストで着地するしで(まああれはクロウジャーの彼岸だろうけども)、だからといって消化不良というか欲求不満にならないのはページ数なんか気にしないよ気が済むまで書き込むよという鋼の筆致の醍醐味によるものなので本読み自体は結構楽しかったな。気軽には薦めないけど。

4102193596セル〈上〉 (新潮文庫)
Stephen King 白石 朗
新潮社 2007-11

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410219360Xセル 下巻 (新潮文庫 キ 3-57)
Stephen King 白石 朗
新潮社 2007-11

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[上巻426P、下巻406P]
ああもう、ケータイケータイ言ってるヤツは全員ぶっ殺す!結構そんなブチキレがモチベーションだったりするのか、キングにしては珍しく書きとばしてるというかやけに先を急いでるみたいで、だけどもそれは雑とかそういうんじゃなくスピードのせいで風景が流れていくのが早い感じ。しかも視点が途切れることなく回り込んで相変わらず痒いところに手が届く描写のおかげで、非常に映像喚起しやすい職人技のリーダビリティ。ただ、キングの場合これが仇となって映画化されるとどれもこれもただの再現フィルムにとどまってしまうわけで、イーライ・ロスで映画化されるらしい今作もせいぜいが新種のゾンビ映画といったレベルにとどまる公算大。おそらくはバスガスバクハツがクライマックスで一件落着してチャンチャンかな。とりあえずはアンテナ両手に走り回るパンツ一丁が楽しみ。

4167705524アメリカン・デス・トリップ 上 (文春文庫 エ 4-13)
James Ellroy 田村 義進
文藝春秋 2007-08

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4167705532アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)
James Ellroy 田村 義進
文藝春秋 2007-08

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[上巻637P、下巻581P]
ずっと前から買ってあったのに、おさらいのつもりで拾い読みしようと思った「アメリカン・タブロイド」をガッツリ再読してしまってたので、ここにきてようやく読了。一貫して漂う爛熟した気怠さはこれが命懸けの賭けに敗れた挙げ句に生き残ってしまった人間の敗戦処理の物語でもあるからで、彼/彼女らの抱えた底無しのアンビバレンツがアメリカの深奥に呑み込まれていく様こそがアンダーワールドUSAを標榜するにふさわしいのだとしたら、前作の昂揚は狂ったファンファーレに過ぎなかったわけで、まさにここからが本番なのかもしれない。この物語は前作でのケンパー・ボイドの役割を果たすウェイン・テッドロー・ジュニアにとっての、掃き溜めで為されるビルドゥングスロマンでもあって、物語のラストでついに自ら枷を解いたこの男のサイコパスはピート・ポンデュラントのそれとは異質なある種のシリアルキラーの萌芽すら漂わせて、彼がドライブするらしい次作が死臭漂う地獄巡りとなるのは既に必至なので、今度はもう文庫落ちを待たずに食らいついて読む。それにしても田村義進氏の翻訳はかつてのギブスン/黒丸尚にも匹敵する憑依っぷりが素晴らしく、乾ききった日本語がささくれてヒリヒリする。
posted by orr_dg at 20:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | Book | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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