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このファンタジーは12才の少女が世界を相手に独り戦うための武器であって通過儀礼とか現実逃避とかいった楽観のパラレルでは断じてないことは(観るまではそういう映画だと思ってたけど)、デル・トロがファンタジーを閉じないままそれに勝利させる結末を選択したことで明白。それゆえの彼岸のハッピーエンドが切なすぎるのは、これが命のむき出しになった時代に犠牲となった子供達へのレクイエムでもあるからで、と同時にそれがデル・トロにとってのある種のオブセッションであることは、やはりスペイン内戦に題を取った『デビルズ・バックボーン』と併せてみればメキシコ人である彼がかつての宗主国の内戦にそれを見い出していることがうかがえて、そこに彼のファンタジーに潜む死の意匠の源泉を辿れる気もする。ここではそうしたデル・トロの想いを託されてこちらとあちらの世界を行き来しつつ、愛する者のために闘う少女兵士オフェリアの一途がファンタジーの彼方からリアルを揺さぶって不意打ちに胸を衝く。結果、我々に求められるのはオフェリアとの共闘であって、こちらが安全圏に逃げ込むことを阻むかのように随所に忍ばせた流血と暴力のグロテスクが知らず鈍色の光を放っている点でやや特異なファンタジーに仕上がっているけれど、それだけにデル・トロの抜き身が露わになっていて彼にとってのマイルストーンともいえる作品。今までデル・トロに欠けているのはギリアムでいうところの(欺瞞に対抗する術としての)悪意だと思っていたけれど、それを補うに足る過剰な潔癖性が確認できたという点で、稀代のヴィジュアリストへの信頼がもう一段深まった感じ。後は、繰り返し語られすぎたことでライフワークの響きさえ持ち始めた「狂気の山脈にて」の映画化に向けて丹精こめて幻視を育てていってもらいたい。「ヘルボーイ」のラスト程度じゃ全っ然物足りないし、待ち望んでるのは決定的な旧支配者のヴィジョンだからね。
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