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「粗にして野だが卑にあらず」の三位がじんわりと染みて、自己破滅でも自虐でもなく秘やかに屈託に沈んでいく日々を黄昏の橙で彩ったファンタジー。屈託の芯を見切り、そいつに忠実であること。分厚い体とオールバックのマット・ディロンがそうしたブコウスキーの目筋を獲得したかのように静かに強く演じて優雅ですらあり、かなり良い。それが憧憬であれ唾棄であれ、一人称の物語など当人以外にはファンタジーに過ぎないわけで、それを紡ぐに徹した脚色がなかなか見事。例えば競馬場での観覧席のくだりも、原作での凄惨な夢オチを手放す代わりに少々下世話につなげてみせて物足りなさを感じたりもしたのだけれど、そもそもが夢の世界で夢オチもなかろうと思えばこのスムースにもうなずけるし、体裁(マッチョ)を演じるバカバカしさなどは本来致命的なルール違反であり、それがもたらす自己嫌悪にあっては躊躇無くパートナーとの関係すらもリセットしてしまう生き方の孤高と切なさが溢れるシーンに原作同様気持ちが痛くなる。他にも仕事場から逃走しようとして絡みつく同僚の小人を投げ飛ばすシーンなど細かいエピソードの原作からのつまみ方も気が利いてるし、投げっぱなしにせずにファンタジーのまま閉じて見せたラストのアレンジも、救済の予感と美しい余韻を残して成功しているんじゃないかな。そして何よりも素晴らしいのが音楽を担当したクリスティン・アスビョルデンで、スコアはもちろんのこと、ブコウスキーの詩に曲をつけて歌って見せた挿入歌の数々がこの作品のカラーを決定していると言ってもよくて、孤独をかみしめるように愛でる歌声と静謐な時間がたゆたうようなメロディが本当に素晴らしく、このサウンドトラックアルバムは必須。ちなみにジャケットは国内盤の方が素敵なのでそちらを推奨。
と思ったらUS盤でもこのジャケなんだね。タワレコで見た外盤のジャケがあまりにもトホホだったんだけど、あれはユーロ盤だったのかな。いずれにしろ即買い推奨。
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