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「冷血」以降、そこで獲得したスタイルを深化させることもないまま表現の核を失ってしまったカポーティがその研ぎ澄まされたナイーヴを失うきっかけとなった日々を乾いたタッチで淡々と描いた秀作。タイトルこそ自伝色を窺わせるけれども、著作である「冷血」において徹底して排除された観察者カポーティの息づかいそのものを中心に据えて再構築されたもう一つの「冷血」とも言える内容なので、できれば著作を読んでおいた方が掴まえられるものが多いかもしれない。死刑囚ペリー・スミスを単なる創作の鉱脈として扱いながらも、自らの精神的な双子としてのシンパシーも露わにする。その一方で死刑がなかなか執行されないが故に著作の最終章の幕を下ろすことが出来ず、表現者としてのフラストレーションを冷酷な意志に変えて死刑執行への後押しすらしてしまう。そうして迎えた死刑執行の当日、カポーティは執行直前のスミスとヒコックに面会するのだが、罵倒と呪詛を予想していたスミスの口からこぼれた親愛と感謝の言葉にカポーティは完全に混乱して嗚咽してしまい、その後死刑台で事切れたスミスを眼前にしてナイーヴな怪物は完全に崩壊する。在りし日のカポーティと言っても写真以外では『名探偵登場』でしか動いている姿を知らないわけなので、フィリップ・シーモア・ホフマンの再現度がどれくらい鬼気迫っているのかピンと来ないのだけれど、生身のポップ・イコンを寸止めのデフォルメで演じ切った点が評価されてのオスカーだったのだろう。「冷血」は、カポーティ言うところの“完璧な孤独”を獲得していたペリー・スミスの悲痛でグロテスクな物語でもあるのだけれども、ここでクリフトン・コリンズ・ジュニアが演じたペリー・スミスは、傷ついた野生動物の哀切と生存本能から滲む狡猾の同居が見事で、彼とカポーティが独房で繰り広げる神経戦の描写が物足りなかったのが何とも悔やまれる。映像で全てが完結するべきだとは思うけれど、この作品に関しては著作を読んでおいた方が濃密な時間を過ごせることは確かなので、「冷血」の一読を繰り返しお薦めしておく。ワタシは読んでないけど読みやすくなった(とされる)新訳版も出たことだし。
| 冷血 トルーマン カポーティ Truman Capote 佐々田 雅子 by G-Tools |
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TBさせていただきます。
私も「冷血」を読んでから観ればよかったと思いました。
また遊びにきます。