2019年08月21日

カーマイン・ストリート・ギター/それを作れば、やってくる

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オフィシャルサイト

なんだか『ブルー・イン・ザ・フェイス』を思い出したりもしたのだ。グリニッジ・ヴィレッジの小さなギター屋さんのドアをたたくあの人やこの人が、煙草をくゆらすかわりにリック・ケリーとシンディ・ヒュレッジの仕上げたカスタムギターを慈しむようにつまびき鳴らしては、こいつが手の中にあるおかげでぼくらはこんな風に真人間のような顔をしてられると思うんだ、とかそんなことを言いたそうにしてはお互いうんうんうなずき合うその姿に、時間の流れを自分の中に通してはそれを甘美な痛みと引き換えに操る人たちの軽やかなペシミズムを感じたりもして、だからワタシはこの人たち(音源が手元にあるのは半数ほどだけれど)の奏でる音楽に引き寄せられてしまうのだなあと、その秘密を少しだけのぞき見した気分だったのだ。そうやってドアの外とは時間の流れやまわり方が通じない空間だからこそ、時間の彼方に消えていったルー・リードやロバート・クワインといったここにいるべき人たちの不在も何だか一時的なことのように思えたりもしてしまうし、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の不機嫌なチェーンスモーカー、エヴァ=エスター・バリントが、35年?そんな時間わたしは知らない、といった風にすっとそこにいてギターをかき鳴らす姿に不意打ちをくらい、ああこれがNYの魔法ってやつか、と一も二もなくひれ伏したのだった。そしてジェフ・トゥイーディーの誕生プレゼントにギターを買いに来るネルス・クラインの、少し照れくさそうな顔と渾身の試し弾きは極上のボーナストラック。むかし何度かNYに行ったとき店の前を幾度となく通ってるのは確かなのに反応できなかったのは、ワタシがそういう人でなかったからなんだろうと思うとちょっと切なくてくやしい。
posted by orr_dg at 21:00 | Comment(0) | Movie/Memo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする